不登校保護者のお悩み ――「毎日登校できなくて大丈夫?」

毎日登校できなくて不安不登校保護者のお悩み

はじめに

今回のテーマは、「子どもが学校に平日毎日登校できなくて、社会に出てからが不安」という保護者さんの悩みについて。

「今から週5日学校に行けないのに、大人になったら毎日仕事に行けるの?」「社会人として生活していけるのかな」と考えると、不安になりますよね。でも、今のお子さんが学校で過ごせる時間と、将来働けるかどうかを、そのまま一直線につなげて考える必要はありません。

今回は、「今、毎日学校に行けない」という姿を、将来への不安とどう切り離して考えればいいのか、さいとうとかざまで話してみました。

話した人

さいとう:元教員(中学・高校)。教員として多くの不登校生に関わった経験からオンラインフリースクールの立ち上げに携わり、500人以上の不登校生と保護者のサポートに関わる。ユルタ代表。

かざま:元保育士。さいとうと同じオンラインフリースクールのスタッフを務め、多くの不登校生・保護者にやさしく寄り添う。

授業時間数と発達段階

さいとう:「週5日学校に行けないと、大人になったとき大丈夫なのかな」っていう不安が出てくること、保護者さんとしては当然あると思うんですよ。

かざま:そうですよね。「今できないなら、将来もできないんじゃないか」って考えてしまいますよね。

さいとう:でも、そもそも子どもって、最初から朝から夕方まで学校で過ごしているわけじゃないですよね。幼稚園なら午前中や午後の早い時間に終わることが多いし、小学校に入ってからも、低学年なら5時間目くらいで帰宅する。学年が上がるにつれて6時間授業が増えて、中学生になるとさらに学校で過ごす時間が長くなる…、みたいに学校で過ごす時間って徐々に増えていくんです。

かざま:考えてみると、少しずつ長くなっていくんですよね。

さいとう:そうなんです。どんな子にも、その発達段階で無理なく過ごせる時間というものがあると思うんです。だから、小学5年生だから「ほかの5年生と同じ時間いられなきゃ」と考えるのではなくて、「今のこの子にとっては、これくらいの時間がちょうどいいんだな」と考えてもいい。

かざま:たとえば、朝から行くのが難しかったら1時間遅れて行くとか。

さいとう:そうそう。あるいは週に1日休むと安定するとか。それが今のその子に合っているなら、それでいいと思うんです。今の「できる時間」が、そのまま一生の限界になるわけではないですから。

学校と仕事の違い

かざま:保護者さんが心配するのは、「学校に一日いられないなら、会社で8時間働くなんて無理なんじゃないか」ということもありますよね。

さいとう:でも、学校で一日過ごすことと、会社で8時間働くことって、かなり違うと思うんですよ。学校では、決められた時間割に合わせて、基本的には同じ場所で授業を受け続けなければならない。長い時間椅子に座って、先生の話を聞いたり、決められた活動をしたりする。

かざま:自分で環境を選べる部分も少ないですよね。

さいとう:そうなんです。でも仕事には、いろんな形があります。デスクワークもあれば、体を動かす仕事もある。人とたくさん話す仕事もあれば、一人で集中する仕事もある。だから、「学校という環境で長時間過ごすことが苦手」ということと、「長時間働くことができない」ということは、必ずしも同じではないんですよね。

かざま:人間関係も全然違いますしね。

さいとう:そう。学校では環境を自分で選びにくいけれど、大人になると、自分に合う仕事や環境を選べる可能性もずっと広がります。

「がんばれる材料」をもつこと

かざま:もう一つ思うのは、大人って、学校に通っている子どもよりも「がんばれる材料」をたくさん持っているんじゃないかなということなんです。

さいとう:ああ、なるほど。

かざま:たとえば、「前にもこれを乗り越えられた」とか、「自分はこういうことならできる」とか。それまでにいろいろな成功体験があったり、支えてくれる人との関係があったりしますよね。友達だったり、仕事仲間だったり。そういう経験があるから、大変なことがあっても、「まあ何とかなるかな」と思ってがんばれることもあると思うんです。

さいとう:そうですね。

かざま:でも子どもは、まだ生きてきた時間そのものが短いですよね。学校がしんどくなったときに、「ここではダメだったけど、別の場所なら大丈夫」と思える経験も、まだそんなに多くない。

さいとう:たしかに。

かざま:だから、「今、学校を毎日がんばれない」というより、「今はまだ、がんばれるだけの経験や環境が十分にそろっていない」と捉えてもいいんじゃないかなと思います。

今は心配しなくていい

さいとう:結局、僕がいちばん伝えたいのは、「週5日学校に行けないから、大人になって困るんじゃないか」という心配を、今の段階ではそこまでしなくてもいいんじゃないかということなんですよね。

かざま:働き方だっていろいろありますしね。

さいとう:本当にそうです。この先、本人も成長するし、経験も増える。出会う人も変わるし、自分に合う環境も少しずつ分かってくる。それなのに、今の学校生活だけを見て、「将来もこうなる」と決めてしまう必要はないと思うんです。

かざま:むしろ今、無理を重ねてしまうことで、自信をなくしてしまうほうが心配ですよね。

さいとう:そうですね。何年も先の「ちゃんと働けるかな」を心配するよりも、まずは今、この子が安心して生活できているか。「ここなら大丈夫だった」「今日は無理なく過ごせた」という経験を少しずつ増やしていくほうが、長い目で見れば大事なんじゃないかなと思います。

今は今、将来は将来まとめ

かざま:「毎日学校に行けない」という今の状態だけを見て、将来働けるかどうかまで判断しなくていいんですね。

さいとう:そうですね。子どもはこれから成長しますし、経験も増えていきます。学校と仕事では環境も全然違います。

かざま:今はまだ、自分に合う環境や、「自分は大丈夫」と思える経験を探している途中なのかもしれませんね。

さいとう:うん。だから、何年も先の社会人生活を心配しすぎるより、まずは今のお子さんの安心を大切にしてほしいですね。今できる範囲で生活したり、学んだり、人と関わったりする。そこで少しずつ「できた」を増やしていく。将来のことは、その積み重ねの先で考えていけばいいと思います。

今回のポイント

  • 子どもは成長に伴って、少しずつ活動できる時間や範囲が広がっていく
  • 今、長時間学校で過ごせないことが、そのまま将来の限界になるわけではない
  • 学校と仕事では、過ごし方・人間関係・環境を選べる幅などが大きく異なる
    • 子どもの特性によっては学校の方が仕事よりずっとツラいことも…
  • 大人になるまでには、成功体験や人間関係など「頑張れる材料」も増えていく
その他のポイント
  • 「この年齢ならこれくらいできるはず」ではなく、今のお子さんが無理なく過ごせる時間を基準に考える
  • 遅れて登校する、週に休む日をつくるなど、安心して続けられる形を探していく
  • 「ここなら大丈夫」「これならできた」という今の小さな経験を積み重ねることを大切にする

“ユルタ”

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