不登校保護者のお悩み ――「勉強や成績の不安とどう向き合う?」

勉強や成績の不安について不登校保護者のお悩み

はじめに

今回のテーマは「勉強や成績の不安について」。
学校を休んでいる期間があったり、登校が不安定になっていると、どうしても勉強のことが心に引っかかりますよね。
対談では、そんな保護者さんが抱えやすい悩みに、さいとうとかざまがゆるやかにお話ししました。

話した人

さいとう元教員(中学・高校)。教員として多くの不登校生に関わった経験からオンラインフリースクールの立ち上げに携わり、500人以上の不登校生と保護者のサポートに関わる。ユルタ代表。

かざま元保育士。さいとうと同じオンラインフリースクールのスタッフを務め、多くの不登校生・保護者にやさしく寄り添う。

勉強はストレスの原因?

さいとう:まず大原則として、「心に余裕ができてから学びに向かう」ですよね。

かざま:ほんとそう。心が疲れてると勉強に気持ちが向かないから、ただのストレスになっちゃうんですよね。

さいとう:本当にね。まあでも、そうなんだよね。だから基本は僕も「ユルタ」とかをやってはいるけれど、「今、勉強しない方がいいかも」っていう子がいるのは絶対あると思っていて。そういうときに、無理に勉強をさせると子どもの状態が悪化してしまうことがあるので、気をつけてほしいです。

“ゆっくり” 立て直す

さいとう:ただ、ケースによっては「少し勉強すると心の回復につながる」子もいますよね。「今日はこれだけできたから、もうゆっくり休んでいいんだよ」って伝えるための勉強、という感じで。

かざま:わかります。家でゆっくり休めない理由が“勉強の遅れ”だった場合は、ほんの少しだけ取り組むことで安心につながることがありますよね。

さいとう:あとは、勉強がわからないことそのものが「学校に行きたくない」理由になっているケースもありますよね。これは不登校から回復しつつある子にたまに見られるんですが、勉強が好きだった子であっても、久しぶりに学校へ行ったら授業がわからない。その瞬間に自信がガッと削がれてしまうこともあります。

かざま:うんうん、元々得意だった子ほど落差にショックを受けちゃいますよね。

親主導はNG

さいとう:ただし、親が主導して「休んでるんだから勉強しなさい」は怖い。

かざま:いちばんよくないですね。あくまで“本人の気持ち”が動くのが大事。

さいとう:例えば学校休んでる時に、ちょっと不安そうな顔をしてたら「どうしたの?」「なんか勉強とか不安?」みたいに優しく聞いてみたり、気持ちが言葉になったタイミングで手助けするくらいがちょうどいいと思います。それで、たとえば「勉強がわからなくて…」とか「次の定期テスト不安だ」みたいなことを言ったら、そういう時にゆっくり勉強を促すのがいいかなと思います。

一教科だけ追いつく作戦

かざま:さっきも話に出ましたが、心が回復したあと、いざ学校に行こうとしたら「勉強が遅れてて行けない」というケース、すごく多いですよね。

さいとう:多いです。保護者さんが焦って登校を促した結果、勉強の遅れに直面して逆戻り…というパターンも。

かざま:「一教科だけ追いつけるようにする」という工夫を聞いたことあります。

さいとう:それ、とてもいいですね。全部を一気に取り戻そうとすると負担が大きいので、まずは得意科目やついていきやすい教科から始めるのはすごくいいと思います。教科ごとに特性もあるので、それに合わせて対応するといいかも。
・体育・音楽など:遅れが生じにくい
・社会・理科など:数時間分の内容が分かっていれば途中からでも入りやすい
・英語・数学など:積み上げ型の教科は個別にゆっくりフォロー
とか。

「テストだけ出席して」問題

さいとう:あと、「テストだけ受けたら?」っていう先生、いますよね。

かざま:いる! そして子どもはめちゃしんどい。

さいとう:先生としては「成績が1にならないように」という優しさなんだけど、久しぶりのテストで30点とか取ってしまうと、そりゃ落ち込みますよね。

かざま:回復のタイミングじゃないと余計にしんどいです。

さいとう:だから保護者さんは“いつ・何を受けるか”の線引きを学校と相談しておくのが大切ですね。

勉強は学校以外でもOK

さいとう:学校の先生が個別に教えてくれることもあります。でも時間の制約が大きいんですよね。

かざま:そうですね。保健室で授業をフォローしてくれる場合もあるけど、それも限界が…。

さいとう:だから家庭教師やフリースクールなどの先生に頼るのも全然アリ。心が完全に回復しきっていない時も、ゆっくり話を聞きながら進めてくれる大人がいると安心です。でも、不登校の子どもは繊細な部分も多いので、やはり専門的な人やちゃんと子どもと向き合ってくれる方がいいですね。

成績の話ばかりの先生

かざま:成績やテストの話を繰り返してくる先生もいますよね。

さいとう:います(笑)。言ってることは正しいんだけど…タイミングと受け手の状態が大事。

かざま:できれば子どもには聞かせたくないですね。

さいとう:そうそう。そして、一番気をつけたいのは“保護者が伝えても、学校側が直接子どもに言ってしまう”ケース。これは本当にしんどい。

かざま:そんなことあるんだ…。

さいとう:あります。親が学校に「成績の話をするのはやめてください」って伝えていたのに、子どもが登校して保健室で休んでいたら、担任の先生から「ちょっといい?」って呼ばれて、成績のことを伝えられる、とか。これは教育委員会案件。しっかり止める必要があります。

学校に伝えるコツ

さいとう:学校に伝える内容が多いと、保護者さんの負担も大きいですよね。私の知り合いのNPOが、不登校の子どもの保護者さんや教員と協力して作成した「学校への依頼文フォーマット」があるんですが、迷ったらぜひそれを使ってほしいですね。

かざま:えー、それめちゃくちゃ良いですね!

さいとう:出欠連絡・刺激しないでほしいこと・担任以外の関わる先生など、全部チェック式でまとめられる形式で、とても評判が良いので、こういうものに頼るのもおすすめです。

https://www.tayounamanabi.com/single-post/gakko-iraibun

勉強は“心の回復”の後にまとめ

さいとう:やっぱり一番のポイントは、「心が元気になってから学びに向かう」ってところですよね。ここが揺らぐと、どれだけ勉強を頑張っても負担が大きくなっちゃう。

かざま:うん。逆に、心が落ち着いてくると「ちょっとやってみようかな」って気持ちが自然に動き出すんですよね。そこを大事にしたい。

さいとう:そして、全部いきなり取り戻すんじゃなくて、一教科からゆるやかに始める。これも大きいですよね。

かざま:そうそう。得意な科目や入りやすい科目からだと、成功体験も作りやすいですし。その積み重ねが自信になって、次のステップにつながります。

さいとう:あと、学校とのやり取りは本当に大切。言ってほしくないことや、負担になることは、最初にしっかり伝えておくと安心ですよね。

かざま:うん。先生に言われた一言で、子どもがすごく落ち込んじゃうこともあるし…。保護者さんが「ここは線を引きたい」という部分を遠慮せずに伝えてほしいです。

さいとう:最後は結局、「その子のペースで戻れるように環境を整える」がすごく大事なんですよね。焦らなくていいし、周りと比べなくていい。

かざま:ほんとそれ。ゆっくりでも、止まっているように見えても、ちゃんと前に進んでいますからね。

今回のポイント

  • 勉強よりも心の回復が最優先
    • 不安の原因が「勉強の遅れ」にある場合は、少しだけ取り組むのも有効
  • 一教科だけ追いつく戦略は負担が少なく、成功体験につながりやすい
  • 「テストだけ出席」の提案は、子どもの心の状態次第で大きな負担に
  • 学校と事前に“言ってほしくないこと”を共有しておくと安心
その他のポイント
  • 「成績の話を子どもに直接する」先生に注意。そのようなケースの際は学校や教育委員会へ申し入れを
  • 依頼文フォーマットなど外部のツールを使うと、学校とのやりとりが楽になる
  • 保護者さん自身が焦らないことが、お子さんの安心につながる

“ユルタ”

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