不登校保護者のお悩み ――不登校についての考えが夫婦で違う
夫婦で考えが違う不登校保護者のお悩み
はじめに
今回のテーマは「子どもの不登校について夫婦の考え方が違うときの対応について」。
お子さんが「学校に行きたくない」と言ったとき、一方は「無理に行かせなくてもいい」と考え、もう一方は「少し背中を押した方がいい」と考える。そんなふうに夫婦で意見が分かれ、悩んでしまう保護者さんも多いのではないでしょうか。
お子さんのことを大切に思っているからこそ、考え方の違いがつらく感じられることもありますよね。
さいとうとかざまが、夫婦それぞれの考えを理解しながら、お子さんに合った関わり方を見つけるためのヒントについて話しました。
話した人
さいとう:元教員(中学・高校)。教員として多くの不登校生に関わった経験からオンラインフリースクールの立ち上げに携わり、500人以上の不登校生と保護者のサポートに関わる。ユルタ代表。
かざま:元保育士。さいとうと同じオンラインフリースクールのスタッフを務め、多くの不登校生・保護者にやさしく寄り添う。
「子どもの状態」と「対応」

さいとう:不登校のお子さんへの対応って、夫婦で考え方が違うことがありますよね。
かざま:ありますよね。例えば、お父さんは「少し背中を押せば学校に行けるんじゃない?」と思っていて、お母さんは「いや、今は本当につらそうだから休ませたい」と考えているとか。
さいとう:そうそう。そもそも、お子さんの状態についての受け止め方が違うんですよね。
かざま:同じ子どもを見ているのに、違う状態だと感じてしまうんですかね?
さいとう:それもありますが、お互いに「この子はつらいんだ」ということを理解していても、「良いと思う対応」が違っている場合もあります。「つらくても、少し頑張らせた方がいい」という考え方と、「つらいなら、まず休ませた方がいい」という考え方ですね。
かざま:なるほど。子どもの状態についての認識が違う場合と、対応の方針が違う場合があるんですね。
さいとう:そうなんです。だからこそ、まずは何について意見が違っているのかを整理することが大切だと思います。

「実際の様子」を共有する
さいとう:夫婦で話すときに大事なのは、イメージだけで話さないことだと思うんですよ。
かざま:というと?
さいとう:例えば「この子は本当につらいんだよ」と言っても、相手にはなかなか伝わらないことがありますよね。でも「最近、朝ごはんが食べられなくなっている」「学校に行く日の朝は起きるのがつらそう」と具体的に伝えれば、受け止め方も変わるかもしれません。
かざま:確かに。実際に起きていることを共有するんですね。
さいとう:そうそう。「今日の朝はこんな様子だったよ」「学校の先生からこんな話があったよ」と、事実を一緒に確認する。そのうえで、それぞれがどう感じたかを話し合うのがいいかなと思います。
かざま:それなら、ただ意見をぶつけ合うよりも、お互いの考えを理解しやすそうです。
さいとう:もちろん、同じ情報を見ても結論が違うことはあります。でも、まずはお子さんの今の状態を一緒に把握することが、話し合いの出発点ですよね。

「この子だったら」を考える
さいとう:夫婦で考え方が違う理由の一つに、自分自身の子ども時代の経験もあると思うんです。
かざま:ああ、ありますよね。「自分が子どもの頃は、嫌でも学校に行っていた」とか。
さいとう:そうそう。逆に、自分も学校がつらかった経験があれば、お子さんの気持ちを理解しやすいかもしれない。
かざま:でも、そこは気をつけたいですね。「自分はこうだった」という考えだけで決めてしまうのは、ちょっと違うと思うんです。
さいとう:うん、そうですね。
かざま:大事なのは「自分だったらどう思うか」よりも、「この子だったらどう感じるんだろう」と考えることですよね。
さいとう:自分の経験を参考にするのはいいと思うんです。ただ、それを絶対視しないことですね。
かざま:そうです! 自分の経験だけで判断すると、子どもの気持ちを自分の考えに当てはめてしまうかもしれません。
さいとう:例えば、僕は子どもが描いた絵を見て「絵の具の色を全部混ぜたんだな。おもしろいよね!」って、すぐ分かったことがあったんです。でも、妻には何を描いているのか分からなかった(笑)。
かざま:なるほど。
さいとう:同じ絵を見ても、受け取り方が全然違うんですよね。子どもの気持ちについても、一方はすごく理解できるけど、もう一方には分かりにくい、ということがあると思います。
かざま:だからこそ、どちらかの考えが絶対に正しいと決めつけず、お互いの見方を共有できるといいですね。

休ませた後の負担
かざま:あと、夫婦で意見が分かれるのって、考え方だけの問題じゃないですよね。
さいとう:そうですね。例えば、学校を休ませるとなったときに、「じゃあ仕事はどうする?」という問題も出てきます。
かざま:そうなんですよね。お父さんが「無理に学校に行かせなくてもいいじゃない」と言っても、実際に仕事を休んで子どもを見るのはお母さん、ということもありそうです。
さいとう:ありますよね。休ませた方がいいと思っていても、自分が仕事を休めるとは限らないですから。
かざま:「休ませたい気持ちは分かるけど、私が毎回仕事を休むの?」ってなったら、また別の問題になってしまいますよね…。
さいとう:そういうときは、外部のサービスを利用することも選択肢に入れていいと思います。
かざま:確かに! オンラインで利用できるサービスなら、送迎の負担も減らせそうですね。
さいとう:そうですね。もちろんサービスによって予約のしやすさや費用なども違いますが、今はいろいろな選択肢がありますから。
かざま:夫婦のどちらが仕事を休むかだけで考えず、ほかの方法も探してみるといいんですね。
さいとう:そうそう。お子さんへの対応方針と、実際にどう生活を回していくかは、分けて考えてみるのも大事ですね。

“不登校”の現状を知る
かざま:もう一つ、夫婦で不登校についての基本的な情報を共有するのもいいと思うんです。
さいとう:ああ、それは大事かもしれませんね。
かざま:例えば「今、不登校の子どもってどれくらいいるんだろう?」「どうして不登校が増えているんだろう?」って、一緒に調べてみるとか。
さいとう:なるほど。僕らは不登校支援に関わっているので、人数や割合についてもよく知っていますが、普段そういう情報に触れる機会がない保護者さんも多いですよね。
かざま:そうですよね。夫婦で持っている知識が違うと、そもそもの捉え方も変わってきそうです。
さいとう:確かに。基本的な情報を共有することで、お互いの認識が近づくこともあると思います。
かざま:自分たちの子どもの頃とは、学校を取り巻く状況も違うかもしれないですしね。
さいとう:そうですね。すぐに意見が一致しなくても、同じ情報をもとに考えることが、話し合いを進める助けになると思います。

「この子に何が必要か」まとめ
さいとう:夫婦で考え方が違うときは、まずお子さんの様子を具体的に共有して、それぞれの考えを話し合うことが大切ですね。
かざま:うん。「自分の考えが正しい」と押し通すのではなく、相手の見方にも耳を傾けられるといいですよね。
さいとう:そのうえで、お子さんの反応を見ながら、無理のない範囲でいくつかの関わり方を考えてみる。最初から一つの正解を決めなくてもいいと思います。
かざま:大切なのは、夫婦のどちらが正しいかではなく、お子さん自身がどう感じているか、ですよね。
さいとう:そうですね。考え方が違っても、お子さんを大切に思う気持ちは共有できるはず。そこを出発点にして、少しずつ家庭に合った方法を見つけていけるといいですね。
今回のポイント
- まずは夫婦で何について意見が違うのかを整理する
- 感覚やイメージではなく、具体的な事実を共有する
- 食欲や睡眠、登校前の様子、学校からの連絡などをもとに話し合う
- 自分の経験は大切だが、絶対視せずお子さんの立場で考える
- 「自分だったら」だけで判断せず、夫婦それぞれの見方を参考にする
- 「この子にとって何が必要か」を共通の判断基準にする
- 最近の不登校の状況についての情報を夫婦で共有する
その他のポイント
- お子さんが学校を休む場合は、具体的な生活面の負担も考える
- 保護者さんのどちらが仕事を休むのか、家庭での見守りをどう分担するのか、など
- 家庭だけで対応するのが難しい場合は、外部サービスの利用も検討する
- オンライン対応や当日予約の可否、送迎の必要性などを確認し、無理なく利用できる方法を探す
- 夫婦それぞれの子ども時代の経験をフラットに話す機会を設けることもおすすめ
- 今のお子さんを理解するヒントになることも
参考リンク
ユルタ代表・さいとうが執筆協力をした、
不登校についての解説記事


