不登校保護者のお悩み ――体調を崩したあとに登校を嫌がる
体調回復後の登校を渋る不登校保護者のお悩み
はじめに
今回のテーマは「体調を崩したあと、回復後も『学校に行きたくない』と子どもが言ったときの対応について」。
風邪やインフルエンザなどで学校を休み、体調が回復したはずなのに「学校に行きたくない」と言い出したお子さん。「どうして急に?」「少し背中を押した方がいいのかな?」と悩んでしまう保護者さんも多いのではないでしょうか。
この記事の対談では、そんなときのお子さんの気持ちや、家庭でできる関わり方について、さいとうとかざまが一緒に考えていきます。
話した人
さいとう:元教員(中学・高校)。教員として多くの不登校生に関わった経験からオンラインフリースクールの立ち上げに携わり、500人以上の不登校生と保護者のサポートに関わる。ユルタ代表。
かざま:元保育士。さいとうと同じオンラインフリースクールのスタッフを務め、多くの不登校生・保護者にやさしく寄り添う。
体調不良は「きっかけ」?

さいとう:体調を崩したあとに学校へ行きたくなくなるケースって、実は体調不良だけが原因じゃないこともありそうですよね。
かざま:確かに。もともと学校で嫌なことがあったり、ちょっと無理をしていたり。それが休んだことで表に出てくるのかもしれません。
さいとう:そうなんですよね。もともと学校生活にしんどさを感じていた子が、数日間家でゆっくり過ごすと、「あれ、家ってすごく安心できるな」って気づくこともありそうです。
かざま:家が安全地帯になっているんですよね。学校で気を張っている子にとっては、なおさらだと思います。
さいとう:だから「体調が治ったのに、どうして行かないの?」と考える前に、もともと学校で何か負担を感じていなかったか、少し気にかけてあげたいですね。

久々の登校の気まずさ
かざま:あと、単純に久しぶりに学校へ行くのが気まずいっていうのもありませんか?
さいとう:ああ、ありますね。「久しぶり!」って言われるのが嫌だったり。
かざま:そうそう! 髪を切ったあとに学校へ行くと「髪切ったの?」って言われるのが気まずい、みたいな感覚です(笑)。何日も休んでいると、周りから注目されるのが嫌だなって思うこともありそうです。
さいとう:もともと学校にちょっと嫌なことがあって、家では安心して過ごせて、さらに久しぶりの登校が気まずい。いろいろな気持ちが重なって「行きたくない」になるんでしょうね。
かざま:それに、病み上がりって気持ちは元気でも、体はまだ疲れていたりしますよね。
さいとう:そうですね。体力が十分に戻っていないこともあるので、気持ちの問題だけだと決めつけないことも大切ですね。

「背中を押してほしい」?
さいとう:難しいのが、少し背中を押してあげた方がいい場合もあるんじゃないかな、というところなんです。
かざま:ああ、確かに。「ちょっと行ってみようかな」と思えるきっかけが欲しい子もいそうですね。
さいとう:そうなんですよ。普段は無理に登校を促さない方がいいと思っていますが、ちょっと気まずくて迷っているくらいなら、「少し学校に行ってみる?」という声かけが助けになる可能性もあります。
かざま:例えば「今日帰ってきたら、一緒に外食しようか!」みたいに、楽しみを作ってあげるのもいいかもしれませんね。
さいとう:いいですね! そういう提案で気持ちが軽くなるなら、一つのきっかけになるかもしれません。
かざま:帰ってきたあと、一緒に楽しく過ごしながら学校での様子も聞けますしね。
さいとう:ただ、ここで気をつけたいのが、本当はつらいのに保護者さんの期待に応えようとする子もいること。「分かった、行くよ」と言っていても、実は我慢しているかもしれません。
かざま:そうですよね。だから、声かけへの反応だけで判断しない方がよさそうです。
さいとう:特に、学校の話をすると泣いてしまうほど嫌がる場合は、無理に背中を押す場面ではないと思います。本人の負担を最優先に考えてあげたいですね。

負担を減らす選択肢を
さいとう:もう一つできそうなのが、登校するときの負担を少し減らしてあげることですね。
かざま:例えば、どんな方法がありますか?
さいとう:「朝から行くのがしんどかったら、午前中は休んで午後から行く?」とか。「今日は部活を休もうか」「習い事はお休みにしようか」とか。
かざま:いいですね。病み上がりなら、いつもどおり全部頑張らなくてもいいですもんね。
さいとう:そうそう。少し遅れて登校する方が気楽な子もいるでしょうし、逆に遅れて行く方が目立って嫌な子もいる。そこは本人に合った方法を考えたいですね。
かざま:選択肢があるだけでも、気持ちが楽になりそうです。
さいとう:ただ、負担を減らす提案をしてもやっぱり行きたくないなら、学校そのものに何かつらさがある可能性も考えたいところです。登校を前提にするのではなく、休むことも含めて一緒に考えていけるといいですね。

「しんどいサイン」の見つけ方
かざま:お子さんが本当にしんどいかどうかを見極めるには、普段の様子をよく見てあげることも大事ですよね。
さいとう:そうですね。特に、我慢するのが上手な子は「大丈夫」と言ってしまうことがありますから。
かざま:例えば、いつもと同じ時間に寝ているのに朝なかなか起きられないとか、トイレに長くこもっているとか、朝ごはんが食べられなくなったとか。
さいとう:ああ、そういう変化ですね。言葉では分からなくても、体や行動にサインが出ていることはありそうです。
かざま:もちろん、それだけで学校が原因とは決められませんけど、普段と違うところがないか気にかけたいですね。
さいとう:保護者さんにとっては難しいことだと思います。でも、ちょっとした変化に気づけると、お子さんの本当の気持ちを考える手がかりになりますよね。

早めの学校連携も
かざま:家庭だけでは分からないこともありますよね。学校で誰と遊んでいるのか、どんな様子なのかとか。
さいとう:そうですね。そんなときは、学校の先生に相談してみるのもいいと思います。
かざま:「家での様子がいつもと違うので、少し気にかけてもらえますか?」くらいの相談でもいいんでしょうか。
さいとう:もちろん、学校の状況にもよりますが、そういう伝え方はいいと思います。「久しぶりの登校で本人も少し不安そうなので、様子を見てもらえるとうれしいです」とか。
かざま:それなら相談しやすそうですね。
さいとう:中学生くらいになると、保護者さんには言えなくても、部活の顧問や教科の先生には話せるという子もいます。担任以外にも話しやすい先生がいれば、協力をお願いしてみるといいですね。
かざま:家庭と学校の両方から様子を見られると、気づけることも増えそうです。
さいとう:そうですね。保護者さんだけで全部判断しなくても大丈夫。周りの大人と協力しながら、お子さんに合った関わり方を探していきたいですね。

「行きたくない」の奥にまとめ
さいとう:体調を崩してから学校に行きたくなくなったとき、大事なのは「少し背中を押してほしい状態なのか」「本当にしんどくて休む必要がある状態なのか」を丁寧に見ていくことですね。
かざま:うん。いきなり答えを決めずに、本人の反応や普段の様子を見ながら、少しずつ考えていけるといいですね。
さいとう:そうですね。登校方法を工夫したり、学校の先生に相談したり、できることはいろいろあります。
かざま:そして、しんどそうなら無理に行かせなくても大丈夫。体も心も、回復する時間が必要ですからね。
さいとう:一番大切なのは、お子さんが安心して気持ちを出せること。「行く・行かない」を急いで決めるより、その子に今何が必要なのか、一緒に探していきたいですね。
今回のポイント
- 体調不良だけが原因とは限らない
- 背中を押してほしいのか、本当につらいのかを丁寧に見極める
- 声かけへの反応を見ながら、強く嫌がる場合は無理に登校を促さない
- 保護者さんの期待に応えようと、我慢している可能性にも注意する
- 登校の負担を減らす選択肢を用意する
- 遅れて登校する、部活や習い事を休むなど、体調や本人の気持ちに合わせて柔軟に考える
- 言葉だけでなく、体や行動の変化にも目を向ける
その他のポイント
- 学校での様子が分からないときは、担任や部活の顧問など、本人が話しやすい先生にも協力をお願いする
- お子さんと一緒に外食や買い物などを楽しむ時間を作り、学校の話も自然にできる雰囲気を整える
- 保護者さんだけで抱え込まず、学校や周囲の人と協力しながら、お子さんに合った対応を探していく

